7月5日。
舞台の中で設定された日付がまさに今日。
こんな風に味わえるのは贅沢なことだなぁ。
今回で5回目の観劇になる。
舞台に限らず、複数回経験すると次どうなるとかある程度覚えてきて、だからこそ少し余裕をもって他に目がいくとか、今まで気付けなかった発見があるみたいなこともたくさんある気がするんだけど、今日はもういったん全部忘れて、余計なことを何も考えずに浴びたいと思った。
覚えていたい忘れたくないって思いが強すぎると、何かハッとした時にそこで一瞬止まってしまうというか、脳内で記憶保存ボタンを押しているような気がして、違うそういうことをしたいんじゃない!!みたいな感覚になって。よくわかんないんだけど……
特に最近普段の生活でも物忘れがめちゃくちゃ激しいという自覚があるので、余計に焦ってそうなってる気がする。意識的に覚えていたい忘れたくないと思わなくても、なんていうか、忘れられないことだけ覚えていられればいいんだよな……
そう考えるとオープニングの曲とか覚えようと思ってなくても自然とメロディを思い出せるし、それだけで泣きたくなる。たぶんそういうことなのかもな。
美しくて悲しい曲、とても素敵。2023年度版のサントラも欲しいよーー!
そんな心持で観劇した本日。
今日の彼は、なんていうか今まで見た中で1番フラットだった。
声のトーンもあまり抑揚を付けず、言葉が合っているか分からないんだけど、ドラマチックに演劇っぽく演じるというのを逆にやめていたような。
本当に36時間ずっと寝ずに尋問を受けていたのでは、と思えるほど声の張りもなく疲れすぎていて、昨日の休演日、ガチで丸々寝てないんじゃ?!って勘ぐってしまうほどだった。そりゃ36時間も寝てなかったらこういうテンションになるよな普通、と。
まだ彼の死を現実のものとして捉えられてないような。彼に電話をかけようと広場を彷徨ってるままみたいに自分の中だけで話すように。
子供のように感情が溢れるまま泣きじゃくっていた日のイーヴとはまた全然違った気がする。
こんなに変えてくるんです?????ってくらい違ったな……
悲しみさえもう彼との部屋に置いてきてしまったのか、それとも、刑事たちに理解してもらうのを放棄したのか。
なんだろう、今までの胸をかきむしるように吐き出してた独白というより、彼の独り言みたいな、夢と現実との間で寝言を言ってるみたいな、刑事たちに聞かせるためのものではなくて、なんかそんな感じに思えた。違う彼がいた。
そういえば、ふぉろわさんの感想を拝見してて思い出したんですけど、今日は刑事の演技もかなり変わっていた気がした。
一昨日までは終始かなり高圧的でがなって大声を張り上げるような感じだったけど、
今日は、彼と同じく36時間尋問し続けてもうほとほと疲れ果てて嫌気がさして大声出すのも疲れたような。
彼に顔を近付けて小馬鹿にして茶化すようなトーンが多めだった気がする…偶然かもだけど。
すごいな、同じ内容のはずなのに日によってこんなに違う。これぞ生の醍醐味!
あと、速記者の井澤さん、声のトーンとか台詞回しが外国映画の雰囲気(伝わって…!)みたいで、それがめちゃめちゃ素敵だなと思っている。
神尾さんの刑事とのやりとりとかも、ここは海外か!?ってくらいかっこいいんだよなぁ。いや実際舞台は海外なんだけど。ガチでモントリオールなんだけど。
なんかそれくらいリアリティがあるというか。あーーん絶望的に語彙がない!!
彼が途中退席した際に、刑事が奥さんに電話を掛けるシーン。
ここで敢えてそれを入れる意味ってなんだろうって考えてたんだけど、刑事にも刑事以外の顔があって、家庭があって、愛する人がいて、それは全部繋がっているようだけどそれぞれ別のものっていうイーヴの言葉と繋がってくるのかなぁとか。
どこで接点を持つかによって関係性がまったく変わってしまう。
「あんなに怒鳴り散らさなければ、キスをして散歩することだってできた」っていうのと同じなのかも。
あと、イーヴが、仕事で他人に体を許すこと、週5日山に行くこと、恋をすること、これは全部同列には考えられないと言ってるし分かってるけど、実際にクロードがイーヴが知らない顔を見せると、別のものだと割り切れない独占欲に変わるの、すごくわがままだけど人間て結局そうだよね…となる。
人間の業みたいなものがたくさん渦巻いている舞台だと思う。
すきだ。